この日を祝う「歌」も数多い。
「世俗曲」(宗教曲ではないという意味で)にも傑作が多い。 トウキョウ地方では、この時期に雪が降ることは稀だと思う、それだけに、「ホワイト・クリスマス」に対する憧れが強いように感じられる。
「アーヴィング・バーリン」の名曲中の名曲「ホワイト・クリスマス」。
この曲では、雪の降り積もった聖誕祭を思い描いている。 つまり、そこに雪はなく、家族もなく、明日をもしれぬ環境の中にいる人たちの希望。 そして大事な人を送り出して家を守る残された家族も、同様の期待を持ち、彼の帰還を待つ。
ヨーロッパ戦線で闘うアメリカ軍の兵士たちと、彼等の家族の心情に重なるこの詩が、大ヒットの大きな理由だった。
ある意味で凡庸な内容の歌詞でもある。 旋律は簡単ながら、コード進行は特異。
心に想い描いたクリスマスの状景は、あまりに単純ではあるけれど、それ故に本質を掴んでいるのだと思う。
なぜ、それが可能になったか。 テレビで面白い説を聞いた。
作詞作曲したアーヴィング・バーリンはユダヤ教の信者だった。 5歳のときにロシアからアメリカへ移住したらしい、ところが学校にも通えない状況に陥る。
無駄な細工のない歌詞が生まれた理由のひとつだろうか。
もちろん、楽譜なんて読めない書けない。 ピアノも上手いとは言えない。
彼はアメリカ社会のアウトサイダーだった。 そのことが冷静に集約したクリスマスのイメージを作り出したという。 それが戦時下の庶民の心に触れた。
外にいるからこそ見えるものがある。
きのう、本当のところは外からは見え難いと書いた。 つまり逆も真なり。
中にいては、本当のところは分からない、とも言いえる。
名声を得たアーヴィング・バーリン、後に歌曲王シューベルトとも並び称される。
アメリカの第二国歌ともなった「ゴッド・ブレス・アメリカ」も彼の作品、彼はアメリカ社会のインサイダーへと変身したのだろうか。
冬至の日に、彼の心の底を思ってみる。
いかにもアメリカ的な彼の音楽を聞きながら。