残り2枚のチケットを目指して競技会は始まった。 そして、マオの鐘は鳴った。
ショートプログラムが終了した段階で、いや、ハチャトリアンの「仮面舞踏会」が
流れ、最初のコンビネーション・ジャンプで、氷の上に降りてきたときに、それは殆ど
決まっていたように思う。(3-3にできなかったことが、少し気になったが・・・)
日本中を覆った暗雲は数えきれないが、そのひとつが切れて、黒い雲の縁が銀色に
輝いた。 重く押さえつけるように聞こえていたラフマニノフの「C# minor」からも
本来の響きが戻っていた。 彼女は自ら扉をこじ開けたのだ。
ひと安心ではあるけれど、期待をかけ過ぎるのはよそう。 彼女の、あの細い肩に。
All Japan Figure Skating Championship
Mao Asada competes in the Ladies Free Skating on the day three of the 78th All Japan Figure Skating Championship at Namihaya Dome on December 28, 2009 in Osaka, Japan.
大阪の「なみはやドーム」で行なわれた全日本選手権は、地上波でのTV放送があった。
YOMIURI ONLINEを読むと、ビデオリサーチ調べで関東地区の視聴率が出ていた。
平均で28.9パーセント、これはかなりの数字といえるだろう。
では、瞬間最高視聴率はというと、なんと37.2パーセント。
そして、それがいつなのかといえば、当然のことだが、日本中が注目していた場面なので
ある。 「第三の女」は誰なのか、誰になるのか。
つまり「鈴木明子」選手の得点が発表される瞬間だった。 「マオ復活」が予測できれば、
次の興味はここに集中する。 灰をかぶっていた姫は「鈴木明子」ということになった。
3位を僅差で争った「中野友加里」には、4年前に続き、気の毒な結果が待っていた。
24歳の女性に4年後は遠い。 今は気持ちが途切れそうだろう。
しかし、シーズン終了までは気力を振り絞ってほしい。 スケートは危険な競技でもある。
怪我などしてもらっては困る。
勝者を讃えたい気持ちはあるが、勝者は敗者を作る。 今は静かにふたりを見守りたい。
それにしても、ふたりとも緊張と不安の中で、良い滑りをしたものだと思う。
バンクーバーへ行くスケーターは決まった。
男子は順当に選ばれたし、アイスダンスは「リード姉弟」しか選手がいないという現状。
それもあって、女子の話ばかりになるが、今大会には30人が出場した。
いつから日本はこんな国になったのだろう、と楽しく考えを巡らせる。
第一線のお姉さん達に、綺羅星のような若手が続いていることをお知らせしておこう。
あの、曇りのない顔と滑りがまぶしい。 4年後にさえ、夢は広がっているのだ。
Musik 前回紹介したアシュケナージのピアノは削除されていた。
Rachmaninoff Prelude in c# minor Op. 3, No.2