「アストロアーツ」の天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ」による画像
子供の頃「アルゴ探検隊」に憧れた。 黄金の羊の皮を求め、勇者達が船に乗り遠征する。
ひとつ前の我が家の車は北欧からやって来たが、ホイールに星座の名前が付けられていた。
最初に履いていたのは「くじら」だったろうか。 その車には鯨のようなところもあった。
(ダイハツ「ミラ」の名は、「くじら座」の有名な変光星「ミラ」から取っていると思う)
暫くして、冬用タイヤのホイールを購入することになったが、カタログを見てすぐに決める
ことができた。 「アルゴ」という名のホイールがあったからだ。
そして、この車はたくさんの峠を越え、谷を渡り、「我が家のアルゴ船」となっていった。
南半球から見える星座に「アルゴ座」というものがあった。
ギリシャ時代から続いた巨大な星座だったが、大きすぎるということでよっつに分割された。
南天の星座を研究していたフランスの天文学者「ラカーユ」の仕事だ。
時代で言えば、18世紀中葉、丁度、アマデウス・モーツァルトが生まれた頃のこと。
「とも」「ほ」「らしんばん」「りゅうこつ」のよっつに分かれた。 どれも船の一部だ。
リュウコツとは「竜骨」のこと、船底の「キール」、船を逆さまにして、家と見立てるなら
屋根の稜線となる部分のことを指す。
逆さに転覆した船で、この部分を小屋浦(屋根裏)に仕立てることが出来たという。
荒れる海で揺れる船体、光無く、使える空気の量も限界がある中で、中に取り残された3人は
救助を待っていた。 八丈島近海で消息を絶っていた「第一幸福丸」の転覆事故である。
90時間という永い時間を費やしたが、海保の精鋭達は彼等の救出に成功した。
しかし、乗組員全員が助かったわけではなく、捜索活動は続いている。
「りゅうこつ座」の主星は「カノープス」という名が付けられている。
全天で「シリウス」に続き、第2番目に明るい星。
南天に高く登る星は、北半球からは見えにくい。 日本程度の緯度からカノープスを見るには
好条件が求められる。 同程度の緯度にある中国では、この「珍しい星を見られた幸運」を
縁起の良いおとぎ話とした。 この星を見られれば寿命が延びるというのだ。
南の空に一瞬だけ地表から僅かに現れる星。 長寿を授けるこの星を「南極老人星」と呼ぶ。
日本でも見ることは可能だ。 早春の観望会では重要なイベントとなる。
「アストロアーツ」の「ステラナビゲーター」によるシミュレーションで確認可能だが、
しかし、低い。 2月の夜の話だ。
幸いにも、来年春に、この星を見て寿命を延ばす人がいるなら、竜骨の下で命を削り、
持って生まれた寿命を縮めた人たちに、その幸運を分けてあげられれば良いなと思う。
しかし、それ以上に彼等を喜ばせることのできるもの、それは、出来るだけたくさんの仲間の
救助であることは、言うまでもない。 なのに、転覆事故から3週間、苦しい状況だ。
このように、他人の命を我が身を賭して助ける行為があるのに、その一方で、他人の命を奪う
行為も地球の上で同時に起こっている。 人間とは、いったいどういうものなのだろう。
このバランスの悪さに戸惑う。
Musik Fiona Apple :: Across The Universe