小学校の低学年だった。「黒い稲妻」と呼ばれる人がいた。
なぜ、そのように呼ばれるのか分からない。 普通に考えれば、黒い肌の短距離選手
などが考えられるが、彼はオーストリア人だ。 衣装が黒かったのかもしれない。
彼はオリンピックの英雄である。 アルペンスキーの三冠王「トニー・ザイラー」。
1935年生まれだが、先日、訃報を目にした。
スキーのことはまったく分からないが、当時、50年代から60年代には、日本でも
大変な人気だったので、ヨーロッパでのそれは計り知れないものがある。
オリンピック後、彼は俳優に転身したが、それは役者の才能があるから、というわけ
ではないだろう。ありがちな理由が考えられるが、当時はそれでも良かった。
実績のあるハンサムなスポーツ選手を放ってはおかなかった、というわけだ。
数年前に、テレビで放送された古い映画を見た。
「空から星が降ってくる」というタイトルなので、内容は想像が難しい。
主演男優は、話の流れから、当然トニー・ザイラーだ。 お相手の女優さんは、
彼と同じくウィンタースポーツ界の出身で、その名を知らぬ者が日本中にいるだろうか、
というほどの超有名人「イナ・バウアー Ina Bauer」である。
最初にスクリーンに現れるときも、(本家の)イナバウアーで登場する。
技術的には、かなり違う。アラカワの、強いて言えば「レイバック・イナバウアー」
ほどには後ろへ倒れない、顔が上を向く程度だ。
そのことがイナバウアーという技と関係ないからだが、アラカワの切れ味が誤解を
生んでしまった。 これは珍しい話だ。
その技の定義である足の使い方は、同じでないといけない。これは少し詳しく言えば
変形のスプレッド・イーグルと呼ぶべきもの、ではないだろうか。
前足はアウト側のエッジに、後足はイン側のエッジに乗っているように見える。
言葉で説明しきれないので、ここまでにしようか。
トニーも、それほど高齢というわけではなかったが、歳を取ると病気との闘いは
苦戦を強いられる。 ケネディの弟も亡くなった。
「白銀は招くよ」