トンボの集まる日があった。 空中でぶつかって、カチカチと音が聞こえるほど。
舞い上がっても同じところに降りてくる。
青い空に飛ぶトンボを見ていたら、トンボーのことを思い出した。
トンボーの遺灰の一部は、太陽系の外縁天体探査機「ニュー・ホライズンズ」に乗せられている。 現在は天王星と海王星の間を飛んでいるだろう。
彼が発見した「冥王星」の探査が始まるのは2015年になる予定。
クライド・トンボーは有名な天文学者「パーシヴァル・ローウェエル」の弟子である。 ローウェルは天才と言ってしまえば簡単だけれど、個性の強い研究者だった。 驚くことに、「日本」についても研究している。 19世紀末に何度も来日して通算3年間も滞在したのだった。
彼は計算で「惑星X」の存在を予測した。 彼の没後も遺志を受け継ぎ、トンボーは捜索を続け1930年に冥王星を発見する。
「その惑星」は、現在ではその座を滑り落ちて「準惑星」のカテゴリーに入っている。
「幻の第9惑星」の存在は消えた。 トンボーも「惑星発見者」という名誉を失う。
ニュー・ホライズンズにトンボーの遺灰を積んだアメリカ航空宇宙局の意図は分からないけれど、それは打ち上げ後に発表されたものだった。
冥王星は遠い。