東京のJR、東京駅から中央線に乗って立川、そこから青梅線に乗って15分。
福生市に住んでいるけれど駅としては「福生/フッサ」のひとつ手前、「牛浜/ウシハマ」という駅を利用している。 家から歩いて7分ほど。
線路は南北に近い方向に敷かれ、北上して「青梅/オウメ」、それから「奥多摩/オクタマ」へと向かう。 駅の乗降口は、西口と東口にある。 西口に降りてゆけば多摩川へ向かい、東口に降りて坂を上れば国道16号、そしてそれに沿って横田基地がある。
利用している東口には北階段と南階段があり、いつも北側を使っている。
東口にはちょっとした広場がある。 南北に集合住宅があるけれど、特に北階段の昇降口には、一階がスーパーマーケットになった集合住宅が隣接している。
その広場には円形のベンチが3基あるのだが、北側のベンチは、その建物に近い。
そのベンチは今は撤去されている。 なぜかというと、利用されていたからだ。
高齢の男女が、そこに座り(ある意味では「占領し」)、歓談し飲食もしていた。 その光景は、見方によれば微笑ましく、家に籠っても仕方ないだろうし、仲間と集う場所も必要と思われた。 酒を飲んでいたかどうかは知らない。 ただ、特に危険な雰囲気でもなかった。
しかし、人々の反応は様々である。 小さな子供を持つ親が、それを嫌がるとしたら、それについてはこちらが口を挟めない。 自分の居住区からは離れているので、詳しい事情は知らないけれど、あるとき、そのベンチは撤去されていた。
そして利用者たちは、南側のベンチへ引っ越した。 ここのほうが、少しではあるけれど人との接触は希薄になる。 彼等は追い出され、20mほど移住したわけだ。
このことをいつか記事にしようと考えていた。 是非を言うのではない。 こういう事実があったこと、そして、ちょっぴり渋い思いをしたこと。
最近、珍しく電車に乗っているので、この件が気になっていた。 きょう、電車で出掛け、戻ってきた。 いちおう写真を撮っておこうと、カメラを取り出して用意した。 そこで、ベンチの真ん中に看板が掲げられているのを見つけた。
それには、こうあった。
「市民からの苦情のため、ベンチは近日中に撤去します。 福生市」
この駅を使うようになって、あるとき思いついた冗談がある。
牛浜の、「牛を雄牛」として「浜を浅瀬」くらいに考えてみた。
ああ、この駅名は「オックスフォード/oxford」じゃないか・・・。
さて、彼等はどうするのだろう。 少なくともこの「東口広場」には居られないということだ。 「オックスフォードの宴」は終わりを迎えるのかもしれない。
これで何かが解決しただろうか、「福生市民」は何を得たことになるのだろうか。
勢いのある冷たい風が吹いて、落ちていたいた空き缶が転がる。
アルミ缶の軽くて頼りなげな音が聞こえて来た。