今月に入って2日の「ラフマニノフ」、きのうの「鐘」と来ると、どうしても
気になることがある。 多くの人が心配しているだろう。
フィギュアスケーターの「マオ・アサダ」のことだ。
Incredibly Limber Skaters Photo: YURI KADOBNOV/AFP/Getty Images 10 月 23, 2009
グランプリシリーズでの不調ぶりは、わたしたちを驚かせた。
ファイナルへの出場は不可能に近い。
マオ・アサダの出場しないグランプリ・ファイナルで誰が勝っても意味がない
というくらいに重要なスケーターだ。 不調の原因は何だろう。
待ちに待ったオリンピックシーズンなのに・・・。
わたしたちはスポーツ選手に過剰な期待をかけ過ぎてしまう。
自分は何の努力もしていないのに、テレビに向かって応援する、応援し過ぎる。
不調の原因を取り除きたくなるが、それはファンの仕事ではない。
本人に取材できるわけではないから、勝手な想像をしても始まらないが、それ
ぞれに推測して、なんとか金メダルへ導きたくなってしまう。
調子の良いときも、悪いときも、温かく見守るだけで良いのだ。
オリンピックの過酷さのひとつは、「4年に一度開かれる」ことにもある。
それ故に生まれるドラマもあるのだが、10代にとっての4年という時間の永さを
思いやってほしい。 あまりにも大きすぎる条件ではないか。
ある場所で、あるとき(何年何月何日何時何分何秒)にパフォーマンスが要求さ
れ、それらをくぐり抜けた者が勝者となる。
もし、マオが優勝を逃しても、世界最高峰のスケーターであるのは周知のこと。
今後、日本に彼女以上のスケーターが生まれるだろうか、というくらいの逸材だ。
マオの憂鬱は、日本中の憂鬱。 しかし、それを解決できるのは彼女自身。
現在の日本は、かつて想像もできなかったほどに、フィギュアスケートの王国と
なっている。 何故こんな奇跡が起きたのか、よく分からない。
選考規定というルール上では、マオがオリンピックに出場できない可能性もある。
それでも、誰かがメダルを日本に持ち帰る可能性は高い。
しかし、マオに出場してほしい。 4年待ったのだから。
そして納得の演技をしてもらいたい。
結果がどうであれ、わたしたちはこの4年間のあなたの努力を賞賛する。
Musik
ショートプログラムの曲はどうなるのだろう。 変更するのか。
フリープログラムはセルゲイ・ラフマニノフの前奏曲「鐘」。
彼の作品で「鐘」というと、20世紀に入って書いた声楽曲もあるので混乱する。
マオが選んだのは、19世紀末に書かれたピアノ曲集「5つの幻想的小品集」、
その第2曲。 Prelude in C-sharp minor , Op 3 - 2 初期の作品だ。
「C-sharp minor/嬰ハ短調」は特異な調とも言える。
作品の数は少ないと思うが有名曲も多い、ベートーヴェンの「月光」が代表的、
ピアノの詩人ショパンのノクターンにも使われる。
交響曲では何と言ってもマーラーの5番だろう。
作曲家は表現したい曲想をその調性の選択により、最初に具体化する場合がある。
実は、その意味で、マオのことが心配になる。
「嬰ハ短調」は「憂鬱」を表す調ではないのか・・・。
オーケストラ版はちょっとやり過ぎの編曲に聞こえてしまう。
若い娘には似合わないような気がする。
ここではアシュケーナージのピアノで、
Rachmaninoff Prelude in C sharp Minor op.3 no.2