これは向日葵、まだ咲いていない。
この写真を見ていると、アポロに扮したルイ14世を思い出した。
彼は、王権神授説を掲げて絶対王政を確立し、フランスの覇権を拡大していった。
ロックミュージックの世界で「覇権を争った二大ギター」について紹介する機会に
恵まれたような気がする。 これはどちらもアメリカ製のギターで、50年代の生まれ。
今月、ムジークのコーナーで紹介したふたつ。
8月14日、レス・ポールの訃報とともに、彼の弾くレスポール。
8月22日、ジェフ・ベックの演奏を紹介したが、彼の弾いているギター、これが
ギブソン社のレスポールと覇権を争ったフェンダー社のストラトキャスターである。
この両者が、楽器としての大きな方向性の違いを持っているため、受け入れられ方に
時代の音楽が反映してくる。
どちらかと言えば、工芸品的な楽器の佇まいを持つギブソン社のギター。
それに対して、工業製品としての明快な割り切りで、設計、生産するフェンダー社。
どちらを手に取るかで、演奏者のタイプが見えてくる部分もある。
演奏家・発明家のレス・ポールと、ギター「レスポール」との実際の関わりについては
専門の研究者もいるようだが、詳しくは知らない。
(それぞれのギターの技術的な説明は、興味があるなら、例えばWikiして頂きたい)
若い頃、フェンダーギターの作られ方にはショックを受けた。
クレモナのヴァイオリンを頂点とする楽器製作術の流れを、微塵も受け継いでいない。
驚くことに、ボディとネックが接着されておらず、しかも単純なビス止め。
電気系はピックガードに全てが実装され完結している。 分業を考慮した設計なのだ。
これがアメリカ的な即物性というものか、楽器に宿る神秘性が笑い飛ばされていた。
しかし、こちらの勉強が進むにつれ、偶然生み出されたような小さな奇跡の集合体と
してのストラトキャスターが、ハッキリと見え始めてきた。
レスポールが演奏されている場面としては、レド・ゼッペリンのジミー・ペイジが
記憶に鮮やかだ。 ストラトキャスターは(これが奇跡の最たるものだが)、
ある演奏家に依って、その真の姿が人類の前に示された。
神の代理人が、このギターの演奏方法を教えてくれたかのように。
数年前、アメリカの音楽専門誌「ローリングストーン」が、(異存はあるだろうが)
史上最高のギタリスト100人を専門家の投票で選出した。
ここで1位になったのは、当然ながら、「神の代理人」、神から王権を与えられた男、
今は亡き「ジミ・ヘンドリックス」だ。
これを端緒として、紆余曲折あったが現在では、ストラトキャスターのほうが優勢。
21世紀の今では、新興勢力の登場もあり、群雄が割拠している。