家の中にあるものを売ってお金にするということがある。
今なら、ネットオークションなどもその類いだろう。
家に「金属」があった。貴金属は普通に買い取ってもらえるので問題ない。
数年前、銅やアルミを売りたくて、金属の「買い取り屋」に連絡をつけた。
数日して、オニイチャン達がトラックに乗って遠い街からやって来た。
車から降りてきた彼らは、手に武器(仕事上の重要な道具)を持っていた。
ふたりがふたりとも、柄の付いた細長い金属を持っていた。
それを見た瞬間、夫婦共々笑い出しそうになったが、おとななので、
ふたりとも押さえることができた。
「あぁ、なるほどな。確かに。」
彼らは「ヤスリ」を持っていた。メッキや汚れを落として、その金属の
正体を見極めたいわけだ、そして目方から値段を決める。
結果、全体の売値は数万円で決着した。
最近知ったことだが、このヤスリというもの、日本での生産はなんと、
その95パーセントが広島県の呉市で行われているそうだ。
さすが、「大和」を建造した「呉海軍工廠」のお膝元と言うべきか。
さて、イギリスの話だが、
時価が推定で300万ポンド、それを1500ポンドで売ってしまったら、
価値を2000分の1にしたことになる。
概算、4億円を20万円くらいの話だろう。これは、逆20万馬券か。
イギリスを、世界を、20世紀を代表する彫刻家ヘンリー・ムーアの作品。
2トンの金属の塊は公園に横たわっていた。 泥棒はそれを必死で盗み、
「溶かして」金属材料として売ってしまった。「金属の値段」で。
これは、山ほどの教訓を与えてくれる話だ。 そして笑いと切なさとを。
だが、考え方を変えてみると、この事件の行為そのものが、
不謹慎な物言いと怒られそうだが、違う側面を見せてくれる。
これは、まるで、現代アートのパフォーマンスのようではないか。
「モノの価値」というものを、ここまで鮮やかに提示してみせたのだから。
いま思う、これがジャコメッティなら、盗まれなかっただろうに。(失礼)
Musik
Steppenwolf - Born To Be Wild
ワイルドでいこう、と言っているのではない。
いわば、金属繋がり。
2番の歌詞に出てくるheavy metal thunderという言葉は素晴らしい。
これで重金属という言葉を初めて聞いた。しかも、「重金属雷」、
なんて詩的な表現なんだろう。