グエン・トラン・フォク・アン、彼は今どうしているのだろう。 世紀が変わって間もない頃、彼は東洋大姫路高校でピッチャーとして評判になっていた。 ヴェトナム難民の子が甲子園で活躍と。
彼の父と母はヴェトナム人で、いわゆるボートピープルと呼ばれた。 アン君は身体はそれほど大きくなかったけれど、高校野球の世界では花開いた。
日本のプロ野球界からは高い評価を受けることがなかったものの、卒業後は社会人野球の世界に入り、今は引退したそうだ。 ヴェトナム人の子が甲子園、当時、高校野球で大きな話題だった。
そして彼に少し遅れて、イラン人の父を持つ少年が甲子園に現れた。 東北高校のエースである。 長身から繰り出される球の威力は、ライバルを圧倒した。 高校を卒業して、日本ハムファイターズへ入団し、その後、日本球界で最高のピッチャーに成長してゆく。
同じ時期に甲子園を沸かせた「アンとダル」。
ひとりは野球から離れ、もうひとりは今年、日本からテキサスに渡った。
二枚の皮と百八の縫い目に染み込んだ汗と涙。